たまゆらなる僕らの想いを


母はきっと、許してはくれないだろう。

──それでも。

ナギの状態を知っていて、このまま帰ることはできない。

滞在期間はあと四日。

その間にナギが目覚めなかったら。

……ワガママだとわかっていても、私は、ナギが目覚める時までそばにいたい。

正座をし、膝の上に置いた手をギュッと握ると、目を閉じて、この島で教わったことを思い浮かべる。

背中を押すようなナギの言葉を。


『家族だからこそ、もっとしっかりぶつかってもいいと俺は思う』


ヒロの冷静で的確なアドバイスを。


『自分がどんな気持ちか、どうしたいかを伝えて、互いが納得いくように根気よく話し合うしかないんじゃないか?』


力強いヒロのお姉さんの教えを。


『あなたが一生懸命考えて起こした行動は、必ずあなたの糧になるから』


女将さんの温かい助言を。


『何かあって困って、悩んで、辛いなら、それは我慢ばかりしちゃあよくないよ』


胸に刻み込まれた言葉たちを、勇気に変えて。

深く息を吸い込むと、私はついに通話ボタンをタップした。

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