たまゆらなる僕らの想いを


俯いていた顔を上げて、真っ直ぐに前を見る。


「うまく話せるかわからないけど、聞いてください」

『……わかった』


相変わらず母の声に柔らかさはないままだけど、私はとにかく落ち着いて話すように心がけて唇を動かした。


「まずは、この前はごめんなさい。ひどい言い方して」

『……』


母からの返事はない。

許してはもらえないということなのか、戸惑っているのか。

顔が見えないからわからないけど、顔が見えないからこそ言えることもある。

私は続けて口を開いて──。


「私、ずっと苦しかった。お母さんと過ごす時間がどんどん減って、いらないって、言われて」


気づいたら、自分の気持ちを打ち明けていた。


「お父さんが死んで、おばあちゃんも死んで、家族はお母さんだけなのに、そのお母さんに捨てられるかもしれないって、考えたら……」


掴んだベロア素材のスカートにシワが寄る。

吐き出した息は震え、それでも。


「すごく、怖くて、苦しくて」


私は、心に張り付いたかさぶたを剥がし、傷を見せていく。

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