たまゆらなる僕らの想いを


『確か、去年の冬は会社の掃除機が不調で朝の掃除が全然できなかった頃よ。全然吸ってくれなくて結局ほうきで掃いてたのよね。ほんと使えなくて、新しい掃除機になった今は快適よ』


ちょ、ちょっと待って。


「いらないのは、掃除機?」


あの日、私ではなく、掃除機の話をしていたの?


『私も詳しく覚えてないけど、掃除機だと思う。なんなら彼に確かめてもいいわ。凛をいらないなんて会話、したことないから。というか』


凛、と。

母は呆れたような声で私を呼ぶと。


『私は、あなたをいらないなんて思ったことはないわ』


ただの一度も。

続けて言葉にされた刹那、じくりじくりとあれほど痛んでいた胸が凪いでいく。


「う、嘘……じゃあ、私は、ずっと勘違いして、勝手にお母さんを悪く思って……」


勝手に、苦しんでたの?

あの時言葉を飲み込まず、勇気を出してなんの話をしているのか聞けていたなら。

ぶつかることが、向き合うことができていたなら。

そんな後悔が一気に押し寄せて、眉尻が情けなく下がる。

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