たまゆらなる僕らの想いを
『ナギ……渚君? 何かあったの?』
「事故に遭って。だから、少しだけ、帰る日を伸ばしたくて」
和解できたばかりでまたワガママ言ったら怒られるかもしれない。
でも、それは最初から覚悟していたことで。
それでも、母の気持ちを知った今は、少しだけ楽な心持ちだった。
「意識が戻らないから、心配なの。もちろん、何週間も休むつもりはなくて、可能な限りでいいから」
だから、お願いします。
スマホを耳に当てたまま、頭を下げる。
もちろん母には見えていないけれど、真剣な気持ちが伝わったのか。
深く長い溜め息が聞こえたあと。
『あなた、渚君のこと好きだったものね。……わかった。学校にも連絡しておく。でも、一週間だけよ』
それ以上はダメ。
もし渚君の意識が戻らなくてもそこで一度帰りなさい。
そう言われて、私は大きく何度も頷いた。
もちろんこれも母には見えない。
見えない代わりに、声で精一杯伝える。
「ありがとう! お母さん!」
そうすれば、母が小さく笑った声がして。
「明けましておめでとう。今年もよろしくお願いします」
私も今更ながらに新年の挨拶を口すると。
『いい年にしましょうね』
希望に満ちた前向きな言葉をくれたのだった。