たまゆらなる僕らの想いを
バスは七時を過ぎるともう走っていないので、明日返す予定だったヒロの自転車に跨った時だ。
「凛ちゃん! 車出すから乗りなさい!」
コートを肩にひっかけた女将さんが愛車のドアを開けて運転席に乗り込む。
早くと促されて、彼女の優しさに瞳を潤ませながら、私は自転車を置くと助手席に座った。
気持ちが焦る中、私は車内で説明する。
以前話した幼馴染が危篤状態に陥っているとヒロから連絡があったこと。
その幼馴染とは、幽霊みたいな状態で私と会っていたこと。
その彼を、今から引き止めにいくのだと。
女将さんは驚きつつも、疑わずに真剣に話を聞いてくれて。
雪が積もり始めた道を慎重に、けれど急いで車を走らせてくれる。
やがて御霊還りの社に続く林の入り口で車が止まると、扉を開けた私に女将さんは言った。
「ここで待ってるからしっかり頑張っておいで。帰ったら一緒に温かい紅茶を飲もうね」
「はい!」
大きく頷くと、私はスマホのライトをつけて林の中へと足を踏み出した。