たまゆらなる僕らの想いを
うっすらと雪をかぶる獣道を進んでいく。
夜の林は暗くて薄気味悪い雰囲気に包まれているけれど、恐怖心を振り払うように私は足を前に前に向かわせる。
そして、身を切るほどの寒さの中、辿り着いた御霊還りの社は。
「これ、は……」
ナギが呼んでいた夢のように、どこもかしかもが白に染められていた。
足元には絨毯のように広がる雪と、それを囲む冬桜の木々。
はらりはらりと舞い散る雪と桜の花びら。
頭上の雪雲の向こうに、淡く光る月がうっすらと見えていて。
「……ナギ、いないの?」
しんと静まり返った空間に、私の声が溶けていく。
ライトを消したスマホにヒロからの連絡はない。
それはきっと、まだ、ナギが生きている証拠。
「ナギ……ダメだよ、ダメ」
小さく頭を振って、ぐるりと辺りを見回した。
涙で滲む景色の中に、ナギはいない。
ただ、ひたすらに白い景色が続いているだけ。
「お願いだから、まだ逝ってはダメ」
どうか逝かないで。
吐き出す息が震える。