たまゆらなる僕らの想いを


ああ、今ならよくわかる。

神様が愛しい巫女の魂を自分の元に引き留めたのが。

大切に想う人が離れていくなんて。

会えなくてなるなんて。

そんな苦痛、耐えられない。

胸元の勾玉を引っ張りだして、両手で包む。


「神様、お願いです」


かつて、巫女の魂を自らの魂と繋げたアメノヨモツトジノカミ様。

その行先が、自らの死に繋がるとしても。


「私の命で彼を助けられるのなら、彼の魂を繋いでください」


ナギの命を繋ぎ止めて、家族を失って居場所を求める彼に、どうか、温かな幸せを。

心から願って、俯いた顔を上げた刹那。

雲の隙間からゆっくりと満月が現れて、御霊還りの社を月光が照らしていく。

月の光を受けて、風に舞う花びらが、雪が、淡く光る。

幻想的な光景に息を漏らしたと同時。

──リリン。

たまゆらが知らせる。


「そんなこと、俺が許さない」


ナギが、ここにいると。


「神様が許しても、俺は許さない」

< 245 / 262 >

この作品をシェア

pagetop