たまゆらなる僕らの想いを
ああ、今ならよくわかる。
神様が愛しい巫女の魂を自分の元に引き留めたのが。
大切に想う人が離れていくなんて。
会えなくてなるなんて。
そんな苦痛、耐えられない。
胸元の勾玉を引っ張りだして、両手で包む。
「神様、お願いです」
かつて、巫女の魂を自らの魂と繋げたアメノヨモツトジノカミ様。
その行先が、自らの死に繋がるとしても。
「私の命で彼を助けられるのなら、彼の魂を繋いでください」
ナギの命を繋ぎ止めて、家族を失って居場所を求める彼に、どうか、温かな幸せを。
心から願って、俯いた顔を上げた刹那。
雲の隙間からゆっくりと満月が現れて、御霊還りの社を月光が照らしていく。
月の光を受けて、風に舞う花びらが、雪が、淡く光る。
幻想的な光景に息を漏らしたと同時。
──リリン。
たまゆらが知らせる。
「そんなこと、俺が許さない」
ナギが、ここにいると。
「神様が許しても、俺は許さない」