たまゆらなる僕らの想いを
ゆらりと陽炎のように現れた彼は、柔らかくて綺麗な髪を淡い月光で染め、私の目の前立つと色素の薄い瞳を伏せる。
「……例え、死なないとしても保証なんか、ないんだ」
今体に戻れても、今状態が安定したとしても、目が覚めるかなんてわからない。
「今じゃなくても、近いうちに死ぬ可能性だってゼロじゃない」
それは、明日かもしれないし、一週間後かもしれない。
ナギの悲しげな声に、私は小さく首を横に振った。
人は、いつかその生を終える。
父も、祖母も、寿命というには早い年齢で他界した。
父が亡くなった時には、死ぬことが人の終着点だと、祖母が話していたのを思い出す。
その終着点が黄泉の国で、そこでは魂は消えることはなく、また生まれ変わる時を待つのかもしれない。
生まれ変われたら、また会えるかもしれない。
そう、聞かされたけれど。
「それなら……このまま、凛に見守られて逝くのも悪くないと思うんだ」
私は、来世までなんて、待っていられない。