たまゆらなる僕らの想いを
フェリー到着まであと十分。
お土産も用意して、あとは乗船を待つだけとなっていた私は、待合室の椅子に座っていた。
暖房のきいた室内には私の他に数えられる程度の人しかおらず、静かな空間で私は鞄からスマホを取り出す。
今朝、ヒロからの連絡では、ナギの容態は安定しているとのことだった。
……本当は、ナギに一目会ってから帰りたかったけれど、きっと大丈夫だと信じてやめた。
会いに行くと言ってくれたナギを信じる。
そう、決めた。
母にもう少ししたらフェリーに乗ることを連絡し、スマホを鞄に戻した時だ。
「凛」
名前を呼ばれて顔だけで振り返ると、そこにはマフラーを解きながら歩いてくるヒロがいた。
「えっ、配達は?」
今日は手伝いがあるから、この時間は見送りに行けないと昨夜聞いていたのに。
「姉貴に頼んで代わってもらった」
説明しながら私の隣に腰を下ろすヒロ。
「で、その姉貴からの伝言で、何かあれば気軽に連絡くれってさ」
メアド知ってるんだろと問われて、私は頷いた。