たまゆらなる僕らの想いを
モコモコのマフラーの下から覗く勾玉を首から外し、両手に包んで祈るように俯向きながら足を進めていたら。
ドンと、正面から人にぶつかってしまった。
しかも、衝撃で勾玉が手から滑り落ち、道路に転がってしまう。
「おっと」
「ご、ごめんなさい!」
慌てて謝罪し頭を下げると、目の前の男性は腰を曲げて勾玉を拾ってくれる。
そして、頭を下げたままの私に差し出すと。
「こっちこそ、待たせてごめん」
耳に馴染む心地よい美声が頭上から降って。
覚えのある、聞きたくてたまらなかったその声に。
ようやく聞けたその声に。
嘘だ、まさかと、心臓が馬鹿みたいに速度を上げる。
だって、ヒロからなんの連絡も……と、そこまで考えて。
『クリスマスプレゼント送るから、明日楽しみにしてろよ』
思い当たった彼からのメッセージ。
勾玉を受け取る際に触れた手は温かくて。
信じられない気持ちでゆっくりと頭を上げれば。
「メリークリスマス」
白い息を吐きながら色素の薄い瞳を柔らかく細めて微笑むその人の姿に、視界が一気に滲んで涙が溢れ落ちる。
彼の胸元には、私とお揃いの勾玉があって。
「……ただいま」
「お、おかえり、なさいっ」
ぐちゃぐちゃな泣き顔で抱き付けば、嬉しそうに笑って抱き締め返してくれた。
とくん、とくんと体越しにナギの生きている鼓動を感じ。
「ただいま、凛」
もう一度、囁くように声にしたナギから、ふわり。
優しい冬桜の香りがした。
- FIN –