たまゆらなる僕らの想いを


「い、たた……」


のそのそと土の上から体を起こし、自分の状態を確認する。

どうやら葉が多くクッションになったのが幸いし、手のひらを擦りむいただけて済んだようだ。

ホッ肩をなでおろし、顔を上げた瞬間──

私は、目の前に広がる光景に思わず声を失った。

足元に伸びる丈の短い緑の野原。

後方から吹く風に押されて、波のように身を倒す野原を囲むように並び立つのは……。


「これ……全部、桜だ……」


薄紅の花を咲かせた桜の木々。

太陽の陽を受けた桜は桃色というよりも白に近く見えて。

私は、ゆっくりと立ち上がると、柔らかく揺れる桜に見惚れながら緑の葉を踏みしめた。

下方に広がる優しい緑と、心を奪う可憐な桜の壁。

そして、空を見上げれば雲ひとつない青空が私を見下ろしていて。

完成された名画のような光景の中、感嘆の息を吐いて改めて見渡せば。

いつから、そこにいたのか。

桜の木々の下に青年がひとり佇んでいるのを見つけて、私は息を飲む。

桜を見上げるその人は、こちらに背を向けていて顔はわからないけれど、ひたすら似ていると思った。

今が現実なのかさえわからなくなるほど、あの日見た夢に。

それなら、彼は……と、青年が誰であるかを期待した刹那。

まるで、答えをくれるように彼がこちらを振り返った。



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