たまゆらなる僕らの想いを


『これ、おもしろいよ』


保育園にあるオモチャを私に差し出して、とびきりの笑顔でオススメしてくれた男の子。

戸惑う私のことなんて気にした様子もなく、ナギは自分が楽しいと思ったものを私に紹介してくれた。

それが、少しずつ楽しみになって。

いつしか保育園に行くのが嫌じゃなくなって。

ナギの事が大好きになった。

だから、父が病気で他界し、母の実家のある都会に引っ越すことが決まった時は泣きじゃくったのを覚えている。

ナギの前でも泣いてしまい、そうして、励ますように手渡されたのがこの勾玉だ。


『これ、オレが持ってるのと合わせると、ひとつになるんだ。じいちゃんからも、繋ぐ力があるって聞いた。これがあれば離れてても繋がってる。だから、凛。大丈夫』


優しい笑みを浮かべ、私の手に勾玉を握らせて。

私に勇気をくれた人。

思い出すだけで心を切なく震わせる、私の初恋。

そして、今でも変わらずに想い続けている、好きな人。



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