たまゆらなる僕らの想いを


想いを胸に勾玉に触れながら窓の外に視線をやれば、秋の夜空には綺麗な三日月が浮かんでいる。

……なぜ、あんな夢を見たのだろう。

もし朋美に話したら、私の想いが作り出したものだと笑うかもしれない。

それは大いにあり得るのだけど……。

なぜだか、さっきから落ち着かない気持ちが消えない。

ナギのことが無性に気になるのだ。

会いたい、と。

常に淡く胸の内にあった願いが強くなる。

私は足下に置いていたスマホを手にしてカレンダーを確認した。

今日は十一月十一日。

来月には冬休みに入る。

母に頼んで、冬休みの間だけ島に帰りたいと頼んでみようか。

きっと、彼氏とゆっくりと過ごせるし、ダメとは言わないだろう。

私も、最近よくこのアパートに訪れる母の彼氏に気を使わなくて済むし、用事なんてないのに出かけたりする必要もなくなる。

悲しいかな、友人の少ない私は交際費もあまりかからず、本屋のバイトで稼いだ貯金もそれなりにあるから、安い民宿なら二週間くらいは滞在できるはずだ。

バイトも今ならシフト申請提出に間に合う。

私はチラリとアンティーク時計を見た。

すでに時刻は新しい日を迎えている。

この分だと、母はまた朝帰りかもしれない。

相談があるとだけメールをしておくことにして、私はベッドに潜り込む。

そして、縋るように勾玉を手で包むようにしながら、瞼を閉じた。



< 7 / 262 >

この作品をシェア

pagetop