たまゆらなる僕らの想いを


それにしても、ここの空気は特別で、なんだか時間の感覚がわからなくなりそうな雰囲気を感じていたんだけど、ナギの話を聞いて納得した。

神聖な場所だからなのだと。

この島にパワースポットがいくつか点在してるのは知っていたけど、多分ここは島民だからこそ知る隠れパワースポットなのかもしれない。


「冬桜がこんなに綺麗に咲いているのも、ここが特別な場所だからなのかな」


桜を眺めながら声にすると、ナギは「そうかもな」と穏やかな口調で答える。


「ところで、この島に来てからどんな感じ?」

「どんなって?」

「凛の苦手、克服できそうか?」

「ん……どうだろう……」


女将さんの腰のことでは頑張れたと思うし、女将さんも喜んでくれた。

自分の言葉だけでなく、心まで受け入れてもらえて私も嬉しかった。

でも、それはきっと女将さんだから。

彼女はとても明るくて温かい。

私もそれがわかってきたから声をかけられたのもある。

そして、今はきっと距離感が丁度いいのだとも思う。

近すぎず遠すぎずの関係は、相手も自分も傷つきにくい。

けれども、心の距離感が近づけば、関係性が深くなれば。

いつか、何かの拍子に亀裂が走るかもしれないのだ。



< 78 / 262 >

この作品をシェア

pagetop