たまゆらなる僕らの想いを


案の定、というか。


『島に? ひとりで?』


最初こそいくつかの確認はあったものの、母の旧友が営んでいる宿にお世話になるのならいいという条件付きで、冬休みの間だけ帰郷することを許してもらえた。

母は私とは違い社交的なタイプの人間で、こちらに越してきて勤め始めた職場でもすぐに友人ができたようだ。

実家に近いから古い友人にも会えるし、ここでの生活は母にはとてもいい環境なのがわかる。

それを証拠に、島での生活は母には退屈だったらしく、戻りたいと泣いていた私に『今後、島に戻る気は全くないから、新しい土地で頑張りなさい』と言ったほど。

それでも、母が仲良くしていた女性がいたのは私も良く覚えている。

幼い頃は知らなかったけれど、その女性が旦那さんと一緒に民宿を経営しているんだと母は教えてくれた。

とはいえ、母もここ数年連絡をとっていなかったようで、私の代わりに予約の電話を入れてくれた際は、相手の女性と『お久ぶり〜! やだ、元気だった?』とテンション上がりっぱなしの会話をしていたのを思い出す。

楽しそうだったのは、私が不在にするからなのかも。

そんな暗い考えが浮かんでしまうのは、母が電話している姿を見て思い出したことがあるからだ。

数年前、母が恋人に私の愚痴を漏らしていたのを。

けれど、痛みを思い出す前にと、追い払うように首を横に振る。



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