たまゆらなる僕らの想いを
【秘する傷を抱えて】
鞄の中のスマホが震えたのは、ちょうど林を抜けた時だ。
足を止めて確かめれば、メッセージが二件。
今届いたのは朋美からで、もうひとつは母から。
相手先一覧に並ぶ母の名前の横に、『御央さんに』という本文の文字が見えたので、もしかして何か伝言でもあるのかとチャット画面を開けば。
『御央さんに迷惑かけたりしてない? クリスマスだからって羽目を外したりしないようにね』
その内容に私は溜息を零した。
私を信用していないともとれる言葉に、がっかりとした気持ちになってしまう。
基本的に、私は母に褒められた記憶というのがあまりない。
『頑張りなさい』や、『大丈夫』といった励ましや応援の言葉はもらうことがある。
けれど、褒めるというのは父がよくくれていた言葉で、母からもらった記憶はない。
もしかしたら小さな頃は褒められていたのかもしれないけれど、物心ついてから覚えている限りではないのだ。
だからなのかもしれない。
私がひとりで家事をこなした時に母から『ありがとう』や『助かるわ』と言われるのが凄く嬉しく感じるのは。