たまゆらなる僕らの想いを
私は痛みを逃すように息を吐き出した。
せっかくのクリスマス。
嫌なことは思い出したくなかったし、忠告メッセージをもらいたくはなかったなと、肩を落としながら続けて開いた朋美のチャット画面には。
『メリクリ! 幼馴染には無事に会えた?』
絵文字をふんだんに使った元気なメッセージ。
思わず頬を緩めて、私は『メリークリスマス! 夢に出てきた幼馴染にも、もうひとり、よく一緒に過ごしてた幼馴染にも運良く会えたよ』と報告した。
そうして、母への返信はどうしようかと悩みながらスマホを手にしたままバス停まで歩く。
バスの到着時刻は、時刻表によると二十分後。
所々が錆びた青いベンチに腰掛けると、母のチャット画面を見つめ、考え、長い息を吐き。
【もっと信用して】とまで入力してから、下唇を軽く噛んで消した。
そして、息を吸い込むと気持ちが沈まないように空を見上げる。
嫌な雰囲気にはしたくない。
ゆっくりと呼吸を繰り返し、口角を上げて。
再びスマホに視線を落とす。
【迷惑かけないように気をつけるね。メリークリスマス】
最後にクリスマスツリーの絵文字を添えて、送信。
そして、私はスマホを鞄の中に戻した。
最後に母とクリスマスを過ごしたのは、もう五年も前なのを思い出しながら。