たまゆらなる僕らの想いを
──バスは予定より少しだけ早く到着した。
まだ日暮れ前のせいか、はたまたクリスマスだからか。
車内に人は少なく、「ありがとうございました」というマイク越しの運転手さんの声にお辞儀を返して、みなか屋前のバス停で降りた。
その直後。
みなか屋から八雲君がお腹を押さえるようにして出てきて、民宿の脇の細い道に入っていくのが見えた。
ここから確認できる範囲では、細い道の先には木が生い茂る山裾があるのみ。
お腹を押さえていたし、何かあったのかと心配になり、私は足早に八雲君の後を追った。
すると、細い道の先には八雲君の背中を見つけた矢先、ふいに草むらの中にその姿が消えて。
私が不思議に思いながら急ぎ駆けつけると──。
ニャア、と。
か細い猫の鳴き声が耳に届いて。
そっと茂みの中を覗き込めば、そこには。
「ほら、今日はソーセージだぞ」
白い毛の子猫に餌を差し出してしゃがんでいる八雲君がいた。