たまゆらなる僕らの想いを


──バスは予定より少しだけ早く到着した。

まだ日暮れ前のせいか、はたまたクリスマスだからか。

車内に人は少なく、「ありがとうございました」というマイク越しの運転手さんの声にお辞儀を返して、みなか屋前のバス停で降りた。

その直後。

みなか屋から八雲君がお腹を押さえるようにして出てきて、民宿の脇の細い道に入っていくのが見えた。

ここから確認できる範囲では、細い道の先には木が生い茂る山裾があるのみ。

お腹を押さえていたし、何かあったのかと心配になり、私は足早に八雲君の後を追った。

すると、細い道の先には八雲君の背中を見つけた矢先、ふいに草むらの中にその姿が消えて。

私が不思議に思いながら急ぎ駆けつけると──。

ニャア、と。

か細い猫の鳴き声が耳に届いて。

そっと茂みの中を覗き込めば、そこには。


「ほら、今日はソーセージだぞ」


白い毛の子猫に餌を差し出してしゃがんでいる八雲君がいた。


< 87 / 262 >

この作品をシェア

pagetop