たまゆらなる僕らの想いを
初めてくれた笑みが凄く嬉しくて。
「どういたしまして。私こそありがとう、秘密を教えてくれて」
私も微笑んで伝えると、彼はまたふるふると頭を振ってから、子猫に「じゃあな」と別れの挨拶をして草をかき分ける。
彼に倣い、私も子猫に「またね」と声をかけ、八雲君の後ろを歩いた。
そうして、二人でみなか屋に戻ると、八雲君は母屋、私は泊まっている部屋に向かおうと階段に足をかける。
その時、八雲君が「自由研究」と声を発して私は彼を振り返った。
すると、私を見ていた視線が彼の足元に落ちて。
「……まだ、何も決まってないんだけど、一緒に考えてくれる?」
彼の方から歩み寄ってくれた。
一緒に考えてほしいという言葉を口にするのに、勇気がいったことだろう。
一歩ずつ、互いの距離が近づいていく。
それはとてもゆっくりだけど、なんだかくすぐったくて、だけど嬉しくて。
私は何度もコクコクと頷いてみせる。
「力になれるように頑張るね」
思わず握りこぶしまで作ってしまったけれど、どうやら意気込みが伝わったようで。
八雲君は本日二度目の笑みを見せて、廊下を走り抜けていった。
奥の方で女将さんが走らないようにと注意する声が聞こえてきて、その賑やかな声に私は笑みを零して階段を上がる。
そして、部屋の扉を開けながら、八雲君の姿に昔の自分を重ねて。
だけど今も大して変わってないかもと、思わず苦笑し、扉を閉めた。