たまゆらなる僕らの想いを


初めてくれた笑みが凄く嬉しくて。


「どういたしまして。私こそありがとう、秘密を教えてくれて」


私も微笑んで伝えると、彼はまたふるふると頭を振ってから、子猫に「じゃあな」と別れの挨拶をして草をかき分ける。

彼に倣い、私も子猫に「またね」と声をかけ、八雲君の後ろを歩いた。

そうして、二人でみなか屋に戻ると、八雲君は母屋、私は泊まっている部屋に向かおうと階段に足をかける。

その時、八雲君が「自由研究」と声を発して私は彼を振り返った。

すると、私を見ていた視線が彼の足元に落ちて。


「……まだ、何も決まってないんだけど、一緒に考えてくれる?」


彼の方から歩み寄ってくれた。

一緒に考えてほしいという言葉を口にするのに、勇気がいったことだろう。

一歩ずつ、互いの距離が近づいていく。

それはとてもゆっくりだけど、なんだかくすぐったくて、だけど嬉しくて。

私は何度もコクコクと頷いてみせる。


「力になれるように頑張るね」


思わず握りこぶしまで作ってしまったけれど、どうやら意気込みが伝わったようで。

八雲君は本日二度目の笑みを見せて、廊下を走り抜けていった。

奥の方で女将さんが走らないようにと注意する声が聞こえてきて、その賑やかな声に私は笑みを零して階段を上がる。

そして、部屋の扉を開けながら、八雲君の姿に昔の自分を重ねて。

だけど今も大して変わってないかもと、思わず苦笑し、扉を閉めた。













< 91 / 262 >

この作品をシェア

pagetop