たまゆらなる僕らの想いを


──図書館には二時間ほどいただろうか。

様々なコーナーを見て回り、最終的に八雲君が選んだのは。


「本当にそれにするの?」

「うん。この話の終わり方、前から気に入らなかったから」


彼が背負う紺色のリュックに納まっている本。

その名は【玉響(たまゆら)物語】といい、ナギが教えてくれた神様と人の娘の物語だ。

まさか八雲君がこれを選ぶと予想だにしなかった。

ナギに聞いた話だと、恋物語だったはず。

人の娘に恋した神さまが娘の魂と共に天に還った、と。

八雲君はその玉響物語の結末が気に入らないという。

天に還る……つまり、死んでしまう結末が好きではないということだろう。

せっかくだから違う結末にするんだと八雲君が語ったところで、次の目的地である商店街の文房具屋さんへ。

ここで私達は画用紙等必要なものを揃えると、お腹が空いたのでヒロが連れて行ってくれた定食屋さんへ行こうかと、八雲君と相談しながら歩いていたら。


「あ、ヒロ兄だ」


店を飾りつけていたクリスマス用のポスターや装飾品を片付けているヒロを発見した。


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