熟恋ージュクコイー
さくらさんがうとうととしているのを、隣に横になって眺める。

こんな事になるなんて、想像もしていなかった。

そのまま寝顔を眺めていると、さくらさんが目を覚ました。


「あ、ごめんなさい。寝てしまいました…」

『大丈夫ですよ。無理させましたか?』

「あ、いえ…ただ、ものすごく久しぶりだったもので…」

久しぶりっていうのが、嬉しい。

『すごく綺麗でした、さくらさん』

「そんな事言われると、もう本当にどうしたらいいかわからないので…」

『可愛い』

たまらずおでこにキスをした。

するとこちらを見ながら、

「出会ってくれてありがとう」

と言った。

それはこちらのセリフ。

彼女の存在は、俺の中であっという間に大きくなった。

あの時、居酒屋に行って良かった。

もう50手前になり、自分の残りの人生、ずっと仕事だけを糧として生きていくものだと思っていた。

ひとりで生きてきたんだ、これからも生きていけるだろうと。

さくらさんの存在が、俺の人生を華やかなものにした。

素直になる事は負ける事のように感じていた昔とは違い、素直になることで得られたものもたくさんある。

この人と一緒にいたら、意地を張ったりする必要はない。

俺を受け入れて、認めてくれる。

安心できる。

これから先は、そんな大切な存在を、力の限り守って生きて行こうと思う。





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