熟恋ージュクコイー

日曜日。

やたらと緊張している。

仕事でもこんなに緊張しないのに。

昨夜急にさくらさんのお子さんに会うと決まり、緊張で眠れなかった…

そしたら、朝方寝てしまい、気づいたら11時。

慌てて出かける準備をしている。

待ち合わせは、‘ル・クプル’。

お気に入りの店だが、まさかそこのオーナー夫婦とさくらさんが昔からの友人だったなんて、本当に世の中は狭い。

家を出て小走りで向かう。  

お店が見えてきた。

息が…苦しい。

お店に入る前に、手のひらに人という字を三回書いて飲み込んだ。

使い古された、おまじないだ。

情けない。
わらをもすがる思いとは、この事だ。

店に入ると、ミキさんが

「いらっしゃい、田中さん!
まさかあなたがさくらの相手だったとはねぇ。
個室で待ってるわよ」

背中をバシッと叩いた。

気合い、入れなきゃな。
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