熟恋ージュクコイー
少し歩くと、静かな住宅街のようなところに来た。

「ここです」

と言われたお店は、一見お店なのかわからないような隠れ家みたいなところ。

「入りましょう」

中に入ると、とても落ち着いた雰囲気のお寿司屋さんだった。

案内された個室にはいる。

『こんな素敵なところを探してくださったんですか?すいません…』

「私が真野さんと来たかったんです。一緒に来られて嬉しいです。」

お寿司屋さんなのに、前菜からコースのようになっていて、とてもキレイに盛り付けられた食事が運ばれてくる度に、

『わぁ、美味しそう。』

と言ってしまう。

何度も言うので、途中から田中さんまで真似し始め、最後にはタイミングまでバッチリ合うようになった。

その度、顔を見合わせて笑ってしまう。

同じことを繰り返しで、また笑って。  

あぁ…楽しい。

最後には握りを頂き、お腹がはちきれそう。

食べている間も、田中さんが大学時代のサークルの話や、引っ越し屋さんでバイトしていた話、就職した頃の失敗談や、独立してからの恥ずかしかった話などなど…楽しい話をたくさんしてくれて、笑いっぱなしだった。

何でもできるおじさまタイプだと思っていたのに、意外な一面をしり、人間味を感じた。

私も負けずに、就職してからの数々の失敗や、家事子育ての失敗など、飾る事なく、ありのままで話して、笑った。

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