熟恋ージュクコイー
「ありがとうございます。そろそろ出ましょうか。」

『はい…』

お店を出て駅まで歩く。

当たり前のように、手を繋ぐ。

人混みでもないし、むしろ静かな住宅街。

でも離したくないような気持ち。

なんだか恥ずかしくて、田中さんの顔が見れない。

「もし良ければ、なんですが…もう少し飲みませんか?と言うか、正直に話すと、まだもう少し一緒に居たくて…知っているバーが近くにあるので、一杯だけどうですか?」

『ありがとうございます。でも…娘がそろそろバイトから帰ると思うので…今日は帰ります。』

「無理を言いましたね。ごめんなさい。では駅まで歩いてタクシーを拾いましょう。」

少し寂しそうな背中を見たら、何とも言えない気持ちになった。
寂しさから救いたい、と思ってしまった。
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