熟恋ージュクコイー
車に乗り込み、20分ほど走って田中さんのお家に来た。

マンションの一室。

すごく片付いている?というか、何もない。

本当に必要なものしかない。

まずは食材を冷蔵庫にしまう。

開けさせてもらった冷蔵庫にも、食べ物は何もない。
水とお茶、ビールだけ。

「普段全く自炊しないので…こんなですが。」

と苦笑いの田中さん。

まぁそうだよね。一人暮らしが長いって言ってたし。

キッチンを借りて、夕飯を仕上げていく。

隣を行ったり来たりする田中さん。

『何かありました?』

と聞いてみると、照れながらこちらに向いた。

「我が家のキッチンにさくらさんがいるって、すごく嬉しくて。何かお手伝いを、と思うけど、何もできないので、近くにいようと思って」

そんなこと言われたらこっちが照れる。

『じゃあお皿出してもらえます?大きめのものと、小皿をお願いします。』

「はい!もちろんです!」

あまりに勢いが良くて、笑ってしまった。
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