熟恋ージュクコイー
夕飯が出来上がった。

マグロのポキに、ご飯、作ってきた肉じゃが、お漬物におひたし、お味噌汁。

家族のごはんのつもりだったので、華やかさが全然ない。

『こんな普段のもので申し訳ないのですが…』

と話すと

「こういうものが食べたくなります。外食ではなかなか難しいので。」

と嬉しそうな田中さん。

いただきまーす!!と元気にあいさつして、食べ始めた。

なんだか子供みたい。

「美味しいー!!本当に美味しい!こんなご飯を毎日食べられる娘さんが、羨ましい!」

そう言って、本当に美味しそうに食べてくれて、あっという間に完食!!!

素直な感想が嬉しかった。

食後、一緒に片付けをして、温かいお茶を頂いた。

「さくらさん、今日は無理を聞いていただきありがとうございました。」

そう言いながら、私の隣に腰かける。

『こちらこそ、すごく楽しかったですよ。家族以外の人にご飯を食べてもらうのは久しぶりで、ちょっと緊張してしまいました』

田中さんが、よいしょっと言って、私のすぐ隣に来た。

近い…近すぎる。

「さくらさん、ごめんなさい、やっぱり我慢できない。」

と言ったかと思うと、こちらに向き直った。

「さくらさん、私に本当にチャンスがないなら言ってください。諦めます。
気長に待とうと思っていたのですが、今日のように私の願いを受け入れてもらうと、どうしても期待します。
そして、友達以上を望みたくなります。
はっきり言ってください。
チャンスがあると思っていても良いですか?」

『わ、私も、友達以上になりたいと思ってます。』

びっくりした。



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