熟恋ージュクコイー
教えてもらった部屋を探すと、一番奥にある個室に名前が書いてあった。

ノックして中に入る。

「はーい、どうぞ」

『どう?調子』

「え?!なんでいるの?」

『別のお見舞いで来たんだけど、さっき皐月さんに会ってここだって教えてもらった』

顔が青白い。

まぁそりゃそうか、手術後だもんな。

「お姉ちゃん、余計なこと言うなぁ。もう大丈夫よ。安静にしていればいいらしいから。パソコン持ち込もうかと思ってるところ」

『こんな時くらい休んだら?』

「でもさ〜1人で病室にいるとなんかねぇ。手持ち無沙汰だし、考える事と言ったら、自分の老後だし、寂しくなるようなことばっかりなんだもん。仕事してた方がマシ」

『病人が何言ってんだよ。』

「もう子供も産めないし、女としての幸せってなんだろうって思ってね。生きてるだけでも幸せなんだってみんな言うけど。。ひとりだし。寂しいんだもん。」

『・・・・。』

「ねぇ、元サヤに戻っちゃう?」

『は?!』

「誰かいるの?」

『いや・・それが・・』

そこから、真野さんのことを話した。

こんなことを元妻に話すなんて、考えてもいなかった。

恥ずかしいったらありゃしない。

「雅也、ずいぶん変わったねぇ。照れながら話してる姿、初めて見た。昔は自信満々だったもんねぇ。可愛らしい素直なおじさんになっちゃって。真野さん、だっけ?振り向いてくれるといいね。振られたら私に連絡して。素直なおじさん、興味あるから」

どこか寂しそうな笑顔で、俺を励ます弥生は、脆く崩れそうに見えた。

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