次期国王はウブな花嫁を底なしに愛したい


「彼女は……もしかして、オルキス兄さんが連れて帰って来たって噂の?」

「そうよ! リリアって言うの。可愛いわよね」

「そうだね。確かに可愛いらしい子だね。ただのボンダナの戯言かと思ってたけど、君を見ていると運命の乙女は本当にいるのかもしれないって思えてくるな」


口を開くより先にグラシナに紹介してもらったため、リリアはもう一度頭を下げるだけに留め、そのまま顔を俯かせた。

驚きで染まっていただけのセルジェルの瞳に、徐々に面白がっているかのような意地悪な輝きが混ざり始めたからだ。

悪意を持ってのことではないと思っても、リリアにとってあまり気持ちの良いものではなかった。


「兄さんも僕と同じように、彼女に何かを感じたのかもしれないね。母さんもそう思わない?」


セルジェルの問いかけとほぼ同時に、リリアとグラシナは彼の後ろへと目を向けた。

侍従たちがさっと引き出来た空間から、ひとりの女性が前に進み出てくる。

背はリリアよりも小さいというのに、顎を逸らし見つめてくる立ち姿が威圧的だからか、存在自体が大きく見えた。


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