次期国王はウブな花嫁を底なしに愛したい
背伸びをし過ぎている。田舎者には似合わない。負の感情が心の中で渦巻き始めたとき、そっとオルキスがリリアの頬に触れた。
「心細かっただろう。待たせて悪かった」
労わるようなオルキスの優しい声音に、リリアの胸がじわりと熱くなっていく。
確かに心細くはあったが、こうしてオルキスが迎えに来てくれ、なにより不安に揺れる彼の瞳を見つめ返していると、そんな気持ちなどすぐに消えていった。
ゆっくりと首を横に振りリリアが微笑みかけると、オルキスも表情を穏やかにさせて、リリアの肩に手を移動させる。
そしてそのまま体重をかけ、耳元へと顔を近づけた。
「リリアの可愛らしさは……ふたりっきりの時にじっくり堪能させてもらいたい」
リリアは勢いよく顔を上げ、顔を赤らめながら甘ったるいくすぐったさが残る耳元を手で押さえた。
オルキスはくくっと笑いながら身体を離し、リリアの赤く染まったその手を優しく掴み取りると、きゅっと握りしめた。
そしてセルジェルとその母親へと身体を向けてふたりを一瞥したのち、もう片方の手を胸元に添えながら恭しくお辞儀をする。
「それでは失礼いたします」