次期国王はウブな花嫁を底なしに愛したい
オルキスはふたりへ視線を戻すことなく、リリアをその場から連れ出した。
焦った風の「置いていかないでよ!」というグラシナの声が後ろから追いかけてきたけれど、リリアも振り返ることはせず、ただじっとオルキスの大きな背中を熱く見つめ続けた。
そのまま連れて来られたのは、広々とした食事室だった。
リリアの視界にまず飛び込んできたのは、長いテーブルとそれを囲うようにいくつも並び置かれた椅子。
テーブル上部の天井からは煌びやかなシャンデリアが下げられており、暖色系の蝋燭の明かりがテーブルにたくさん並べられている美味しそうな料理を照らしている。
たくさんのお皿が飾られていている壁際の戸棚前で話をしていたセドマとアレフが、三人が室内に入ってきたことに気付き、すぐさま歩み寄ってくる。
しかし、オルキスはふたりに止まるよう手で合図を送り、そのまま自分はリリアを連れて窓側に位置する席へと進んでいく。
そしてオルキス自ら椅子を引き、「どうぞ」とリリアに座るように促した。
リリアは恐縮しながらもこくりと頷き返してから、先に席に着くことを申し訳なく思い、グラシナやアレフへと頭を下げた。