次期国王はウブな花嫁を底なしに愛したい
リリアが席に着くとその隣にオルキスが座る。オルキスの向かい側の席へとグラシナが、続けてリリアの前にアレフが、アレフの隣りにセドマが着席する。
楽しそうに席に着いたグラシナだったが、オルキスから不満の眼差しに顔色を変え、むっとしかめっ面をしてみせた。
「嫌です! わたしくも同席させていただきます!」
「俺はセドマと仕事の話をしたいのだが」
「まぁ仕事ですって!? それではリリアにつまらない思いをさせてしまいます。モルセンヌでの初めての夜ですもの、おもてなししたいわ。楽しく優雅な気持ちでたくさんお喋りをしながら、食事を美味しくいただきましょう!」
グラシナが言い終わらぬうちに、弦楽器や管楽器を持った男性たちが食事部屋へと入ってきて、それぞれがオルキスへと一礼する。
何事だと眉間にしわを寄せたオルキスに「わたくしが呼びましたの」とグラシナが一言添える間に彼らは準備を整える。
バイオリンの控えめな音色に様々な音が続き、しっとりと胸に染み入るような音楽が奏でられていく。
「……仕方ないな」
落ち着かぬままオルキスを見つめていたリリアだったが、グラシナへと向けられていた彼の視線が自分へと移動したことで、赤く染めた顔を慌ててそらした。