次期国王はウブな花嫁を底なしに愛したい
面白いという気持ちを共有したくてオルキスへと顔を向ければ、また違う感情がリリアの中で膨らみ出す。
どの瞬間に彼を見ても、オルキスはすぐに視線を受け取り、リリアへと優しく微笑み返してくるのだ。
飲んでいたお酒のグラスをわずかに掲げながらウィンクをされた時だけはさすがに照れて俯いてしまったりもしたが、この晩餐はリリアにとって幸せに満ちた時間となった。
食事を終え部屋を出ると、またオルキスがリリアの手を掴んだ。
ふたりの背後から人目をはばからず繋がれた手をじっと見つめたまま、思わず照れ笑いをしてしまったアレフにオルキスの冷めた目が向けられる。
「なにか?」
「……いえ、何も」
咳払いで気まずさを誤魔化したアレフの前へと、ニコニコ顔のグラシナが進み出て来る。
「お兄様の相手がやっと現れてくれて、わたくしホッとしてますわ。リリアならなんの文句もありませんし」
胸元に手をあてつつ、グラシナが足を止めた。つられるように皆の足が止まる。
「今宵は、テガナ村の貴重なお話をたくさん聞けて、とても良かったわ。今度は女同士でゆっくりと、ね?」
「はい! ぜひ!」
華やかな所作で「おやすみなさい」と挨拶をしたあと、グラシナはお付きの者とともに列を離れていく。