次期国王はウブな花嫁を底なしに愛したい

リリアが寝室を出ると、ほぼ同時にオルキスとアレフは扉の向こうへと姿を消した。

昨晩、夜遅くまで居間からセドマとアレフの話し声が聞こえていたことや、部屋の中にある大きさの違うふたつのソファーそれぞれに無造作に放置されたブランケットがあることから、アレフは一晩中この部屋にいたということが分かった。

居間にはセドマ以外に、昨日リリアのお世話係の命を受けた女性と、城に着いた時にオルキスを迎えに出てきた白髪の男性がいた。

男性はリリアに挨拶をしてから、「それでは後ほど」とセドマとの話を終わらせて、きびきびした足取りで部屋から出て行った。

後ほど何があるのかをリリアが知ったのは、食事や街へ出る準備を整えたあとの事だった。


「今から王様の所に?」


庭でオルキスが待っていると再び姿を見せたアレフと共に廊下を進みながら、リリアは斜め後ろを歩くセドマに顔を向ける。


「あぁ。先にオルキス様がお前と一緒に町へ出ることを知っていたら、そちらに同行することを選んだのだが……アレフ、知っていたなら教えてくれても良かったのに」

「いえ。俺もオルキス様から聞いたのは、朝、部屋を出た後のことですよ」


不満たっぷりにも見える顔をしたセドマに、アレフが苦笑いをした。


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