次期国王はウブな花嫁を底なしに愛したい
2
馬車の中、オルキスと向き合う形で座面に腰掛け、車輪から伝わってくる揺れに身を任せたまま、リリアはぼんやりと窓の向こうを見つめていた。
「リリア。大丈夫か? 少し顔色が悪い。城に戻るか?」
話しかけられ慌てて馬車の中へと視線を戻したリリアは、オルキスが心配そうな顔で自分を見ていたことに気づかされる。
「違うの! 体調が悪いとかそういう訳ではないから、心配しないで」
初めての場所だった割に昨晩はよく眠れていたし、食事もしっかりとれているため、体調の面では良好だと言っていいだろう。
しかし王妃やユリエルとのやり取りを思い返すたびに心が疲弊し、リリアの表情はどうしても曇りがちになってしまう。
「そう言えば、城から出てきた時も顔色が優れなかったな」
ふかふかの背もたれに寄りかかりながらオルキスは腕を組み、心の中を覗き込むかのようにリリアをじっと見た。
理由を問いかけられているように感じはしても、ふたりのことはやはり言い出し辛かった。
代わりに、ふっと頭に浮かんできた人物のことをリリアは話し出す。
「城の廊下で、初めて呪術師を見ました」