次期国王はウブな花嫁を底なしに愛したい


馬車の中、オルキスと向き合う形で座面に腰掛け、車輪から伝わってくる揺れに身を任せたまま、リリアはぼんやりと窓の向こうを見つめていた。


「リリア。大丈夫か? 少し顔色が悪い。城に戻るか?」


話しかけられ慌てて馬車の中へと視線を戻したリリアは、オルキスが心配そうな顔で自分を見ていたことに気づかされる。


「違うの! 体調が悪いとかそういう訳ではないから、心配しないで」


初めての場所だった割に昨晩はよく眠れていたし、食事もしっかりとれているため、体調の面では良好だと言っていいだろう。

しかし王妃やユリエルとのやり取りを思い返すたびに心が疲弊し、リリアの表情はどうしても曇りがちになってしまう。


「そう言えば、城から出てきた時も顔色が優れなかったな」


ふかふかの背もたれに寄りかかりながらオルキスは腕を組み、心の中を覗き込むかのようにリリアをじっと見た。

理由を問いかけられているように感じはしても、ふたりのことはやはり言い出し辛かった。

代わりに、ふっと頭に浮かんできた人物のことをリリアは話し出す。


「城の廊下で、初めて呪術師を見ました」



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