次期国王はウブな花嫁を底なしに愛したい

ボンダナの予言がまた当たったと囁き合う者も、オルキスを取られてしまったようで悔しがる若い娘たちも、リリアを愛おしそうに見つめるオルキスの眼差しや、きょろきょろと目を輝かせて市場を見つめるリリアの純朴さに、少しずつ心を奪われていく。

時折、リリアは後ろへと身体を向けては、オルキスとひとつふたつ言葉を交わし、そして顔を見合わせてはふたり同時に笑みを浮かべた。

ふたりの間に生まれた穏やかな空気が、見ている者の気持ちまでをも優しく包み込んでいく。

オルキスやリリアの邪魔をすることなく一定の距離を保ったままでいる人々に見守られ、三人は時間をたっぷり使いながら市場を通り抜けた。

そのまま時計塔目指して進み出した時、オルキスはふたりを見たくて集まってきた人々のその向こうへと視線を伸ばし、何か疑問を感じたかのように眉根を寄せた。

斜め後ろからその様子に気付いたアレフも、ちらちらとそちらを見ながら囁きかける。


「オルキス様、なにか?」

「たった今通りすぎて行った馬車……セルジェルだな」


言われアレフは改めて目を向けたが、馬車はいくつか確認できても、距離が多少離れていることもあり、どれのことを指しているかまでは分からなかった。


< 142 / 224 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop