次期国王はウブな花嫁を底なしに愛したい
第四章、運命を繋ぎ止める手
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「リリア様、紅茶でもいかがですか?」
執務室のソファーに座り小難しい顔で本を読んでいたリリアの前へと、マルセロが可笑しそうに笑みを浮かべながら紅茶を置いた。
「ありがとうございます! いただきます!」
リリアは手にしていた本を傍らに置くと、今にでも泣き出しそうな顔でティーカップを手に取り、紅茶を口に含む。そして満足気に大きく息を吐いた。
この部屋の主であるオルキスも走らせていたペンを止めて、そんなリリアの様子に苦笑する。
ボンダナがリリアを運命の乙女だと認めてから、五日が経とうとしていた。
その間ずっと、オルキスは頑なに自分のそばにリリアを置き続けていて、今現在も継続中である。
オルキスは仕事机で書類の束と格闘していたり、やって来た役人と話を交わしたり、時折執務室と繋がっている部屋へと場を移し、領地やら何やらと小難しい話を交わす一方、リリアの定位置は執務室のソファーだ。
そこで礼儀に関しての教本に目を通したり、モルセンヌを始め、アシュヴィの主要な街のことを覚えたり、歴史についてのおさらいをしたりと、たくさんのことを必死に頭の中に詰め込もうとしていた。