次期国王はウブな花嫁を底なしに愛したい
「聞いていただろ? 数日前のボンダナの言葉を。王も認めている。俺の妃としてふさわしいのはお前じゃない」
なおも冷たく突き放すオルキスへと、ユリエルは声を張り上げ懇願する。
「第一夫人が駄目なら、せめて……私を第二夫人にしてください」
しかし心からの願いは、オルキスに鼻で笑われ一蹴された。
「あいにく俺は器用に立ち回ることが出来ない。不器用に、ただ一人しか愛せない。だから妃は一人でいい。荷物をまとめて早急に出て行ってくれ」
すっと前に出てきたアレフに腕を掴み取られそうになり、ユリエルは必死に抵抗し、這ってでもオルキスに近づこうとする。
「オルキス様! お願いです!」
「見苦しい。お前が男を雇い、リリアに何をしようとしていたかを、俺が知らないとでも思っているのか? これ以上視界に入ってこようものなら、俺がこの場でお前を叩き切る」
告げられた言葉と、オルキスが剣を引き抜くのを目にし、ユリエルの顔から一気に血の気が引いていく。
そしてリリアもまた、時計塔の前で男に襲われそうになったあの事件が、裏で手を回していたのがユリエルだったことに大きな衝撃を受けていた。