次期国王はウブな花嫁を底なしに愛したい

王妃を先頭にして、リリアを担いだオーブリーと、宴を純粋に楽しみにしているかのような足取りのユリエルが、続けて階段をのぼっていく。

セルジェルは立ち上がることも出来ぬまま、唇を噛んで一行から目を逸らした。



+ + +



オルキスは物置小屋から出て、焦りと苛立ちの表情で周囲を見回す。


「ボンダナもいないか……いったいどこにいる」


迷うことなく庭園を駆け抜け辿り着いた小屋の中にボンダナはいなかった。

そしてリリアの姿もそこにはなく、来る途中も見つけることはできなかった。

世話係が言うには、リリアは庭にいるボンダナに会いに行ったようだった。

これから宴も控えていてあまり時間に余裕がない今、リリアが庭のどこかにいるボンダナを探しに行ったとは考えられず、きっと窓からボンダナの姿を見かけたことで話がしたくなったと考える方が自然だろうと思えた。

だとしたら執務室から見える庭園に向かったということになる。

迷うからということよりも、庭園の奥まった場所でボンダナが、その神秘的な力を駆使し植物を栽培しているがために、そこに城の者は立ち入らないようにしている。


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