次期国王はウブな花嫁を底なしに愛したい
真剣な面持ちで告げられた男からの言葉に、リリアは思わず唇を引き結ぶ。
強く望めば、自分が焦がれていた未来に触れることができるかもしれない。
初めて会ったばかりだというのに、男の言葉はリリアの心に希望の灯をつけるほどの強い力を持っていた。
高揚した頬にまた雨の冷たさを感じ、リリアは再び空を見上げる。
「あまりのんびりもしていられないな」
男は呟くと同時に白馬へと飛び乗り、馬上からリリアに向かって手を差し伸べた。
「リリア、手を貸せ」
「……えっ。あの」
「良いから。早く」
戸惑いつつも男の手に己の手を乗せた瞬間、リリアの口から短く悲鳴が上がる。
男は大きく身を乗り出すと、力強く引き寄せたその手をリリアの背中へと回し、そのまますくい上げるように馬上に引き上げたのだ。
「村へは、このまま真っ直ぐ進めばいいか?」
「……はっ、はい」
男の両腕に挟まれているこの状態が、まるで後ろから抱き締められているような気持ちにリリアをさせていく。
体勢だけでも気恥ずかしくて仕方がないというのに、男に横腹を蹴られ走り出した馬の勢いに押され、リリアは男の身体にもたれかかることを余儀なくされる。