次期国王はウブな花嫁を底なしに愛したい
「あなたのお名前も教えて?」
ほんの一瞬考えるような顔をしてから、男はリリアをじっと見つめ口を開く。
「オルキス」
「……オルキス」
繰り返せば、自然とリリアの口元に笑みが浮かんだ。
「ようこそテガナ村へ。時間が許す限り、ゆっくりしていってね、オルキス!」
リリアの言葉にオルキスは目を見張った後、楽しそうに笑い出す。
何が可笑しいのか分からないリリアは、取り残されてしまったような寂しさを覚えながらも、むっと顔をしかめた。
「なんで笑うの?」
「……すまない。気にするなリリア」
「そう言われると余計気になる」
一呼吸挟んだあと、オルキスは穏やかな眼差しをリリアに向ける。
「お前に名を呼ばれると、くすぐったいな」
甘さを含んだ声音と優しい瞳を向けられ……そしてなにより自分と同じことを彼も感じていたことを知り、リリアの頬が熱くなっていく。
オルキスにリリアと呼ばれるたびくすぐったくて、鼓動が早鐘を打つ。
自分もそうだと素直に打ち明けられないまま、リリアはオルキスの腕の中で身を小さくさせたのだった。