次期国王はウブな花嫁を底なしに愛したい

くしくも似たような話を、家を飛び出す前に聞いたばかりだ。

父が今から王都に会いに行こうとしている相手が、まさに自分の目の前にいる彼らなのだろうか。

奇妙な縁に、警戒心よりも戸惑いの方がリリアの中で大きくなっていく。


「リリア。家に案内してもらえるか?」


オルキスから真剣な面持ちで頼まれ、リリアは視線を揺らしたのち、歩き出す。


「……どうぞ。父はこの中です」


門の所で振り返り、オルキスに儚げな微笑みを向けると、リリアは敷地の中へと入って行った。


「ありがとう」


ぽつりと囁きかけ、オルキスは白馬の手綱を掴み取ると、リリアの後を追い歩き出す。


「本当にさっきの娘はセドマさんの!? いっ、いやそれよりもあの髪の色だ。目は……何色だった? まさかあんな田舎娘が? どうなんですか、オルキス様」


興奮冷めやらぬ様子のアレフに、再びオルキスは大きく咳払いする。


「しばらく、オルキスと呼べ。様はいらない」

「はい!?」

「良いから従え……それから」


オルキスは門から敷地内へと一歩入ったところで足を止め、混乱を極めているアレフへと振り返り、鋭く睨みつけた。


「俺の前では口に気をつけろ。再び田舎娘と蔑むようなら、例えお前でも容赦しない……分かったな?」



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