次期国王はウブな花嫁を底なしに愛したい
深くかぶっていたフードを外し顔を露わにさせた若者を見て、ボンダナはほうっと息を吐く。
艶やかで柔らかな黒髪、現国王と同じ深く澄んだ赤の双眸、透明感のある白い肌。
整った美しい容姿は容易く人々の目を奪い、魅了する。
しかしオルキス本人には、その自覚が乏しかった。
自分のことを潤んだ瞳で見つめているボンダナをふざけているとでも感じたのだろう。
苛立ちを隠そうともせず、思いっきり顔をしかめた。
「それにここに俺を呼びつけたのもお前だ。しかも人目につかぬようこっそり来いと。お前こそ、いったい俺に何の用だ」
「相変わらず綺麗な顔をしておるな。わたしがもうすこーし若ければ、喜んでお前の花嫁になってやったというのに」
「やめろ。気が滅入る。早く要件を言え」
オルキスから冷たい眼差しをむけられ、ボンダナは「つれないのう」と短くぼやき、己の潤いの感じられない縮れた髪の毛をつまんだ。
「ほんのすこーし錆びれてはおるが、見ようによってはわたしの髪も金色に見えなくもない。運命のおなごが見つけられんようなら、わたしが代わりに……」
「……おい。くだらないお喋りをするために、俺を呼び出したのか?」