次期国王はウブな花嫁を底なしに愛したい
「お久しぶりです」
「……なぜあなた様がここに」
セドマの声は驚きで震えていた。
見たことのないセドマの様子にリリアは呆気にとられ、アレグロは目を細めて怪しむようにオルキスを見た。
「なぜ? なかなか来ていただけなく、さぞお忙しいのだろうと思いまして、それならばとこちらから伺った次第です」
オルキスが答えると、アレグロも彼が誰かということに気が付いたのだろう。引きつった声を上げ、慌てて椅子から立ち上がろうとする。
リリアは普段と様子の違うふたりを不思議に思いながらも、急な動きに身体が追い付かなかったのか腰のあたりを手で押さえうめき声を発し始めたアレグロへと慌てて走り寄った。
心配し差し伸べられたリリアの手に掴まりながらも、やはりアレグロの視線はオルキスへと向いてしまう。
オルキスは軽く微笑んだ後、人差し指を自分の唇の前にかざし、続けてリリアへと目を向けてみせ、アレグロに自分の思いを伝える。
アレグロも自分に寄り添い立つリリアをちらりと見てから、目を見開いたままこくりこくりと小さくオルキスに頷き返した。