次期国王はウブな花嫁を底なしに愛したい
やはりセドマの意志は固かった。
アレグロは歯がゆさを感じているかのようなため息をつくと、よろめきつつ近くの椅子へと手を伸ばす。
リリアはアレグロが無事椅子に腰を下ろすまでその身体を支えたあと、父に向かって一歩進む。
何か言いたかった。出来ればセドマの気持ちを揺るがすことの出来る一言をリリアは言いたかったのだけれど、結局何も思いつかず、悔しさだけが募っていく。
無意識に視線を移動させ、リリアはドキリとする。顎に手を添え思案していたオルキスが自分と目が合ったことで、意味ありげな笑みを浮かべたからだ。
「……そうか……ならば、モルセンヌには娘だけ連れて行こう」
オルキスのその一言に誰よりも早く反応したのは、セドマだった。
そのことにオルキスはまた笑みを浮かべ、セドマにむかって得意げに話を続ける。
「ボンダナの予言した乙女の話を聞いているか? 元騎士団長を連れ帰れなかった代わりとして予言に似通った彼女を差し出せば、俺も第一王子から咎められずに済むだろう。逆によくやったとお褒めの言葉をいただけるかもしれない」
入口近くで控えていたアレフは「くくっ」と肩を揺らし笑うが、すぐさまセドマに憤りの眼差しを向けられ、慌てて「失礼」と咳払いする。