次期国王はウブな花嫁を底なしに愛したい
リリアはオルキスの言葉に胸が震えるのを感じていた。
彼から発せられた言葉は、リリアには本気のものに聞こえ、自分でも止めようがないくらいに心が期待でいっぱいになっていく。
反面、素直にその喜びや自分の思いを口にしてしまったら最後、セドマの怒りを買い、全てが駄目になってしまうのではという怯えの気持ちも少なからず心の中に存在する。
余計なことを喋らない方が良いかもしれないと、成り行きを黙って見守ることにしたのだが、再びオルキスと目が合ったことでリリアは思わず息をのむ。
突然向けられた鋭く冷やかな眼差しに恐怖を覚え、身体が委縮してしまったのだ。
「父親に願いを聞き入れてもらえないなら、娘に言うことを聞いてもらうしかないだろ? 無理やりにでもな」
そう言ってオルキスが動いた瞬間、わずかに時がとまった。
狭い室内に金属音が響き渡り――数秒後、アレフの「オルキス様!」という叫び声と共に、再び時が動き出す。
リリアの身体に震えが走った。目と鼻の先で、鈍く輝くふたつの剣の刃が重なり合っていたからだ。
鍔迫り合いをしているのはオルキスとセドマだった。