次期国王はウブな花嫁を底なしに愛したい
オルキスが振り下ろした剣をセドマがかろうじて受け止めている状態だと知れば、オルキスが自分を狙ったのだということにも気づかされ、リリアは息が上手く吸えなくなる。
「誰が動けないって?」
オルキスがにやりと口角を上げると、セドマは失敗したというように唇を噛んで見せた。
「少なくとも騎士団として現役のアレフよりも、俊敏さは格段に上だ」
一歩後ろへと後退するとともに、オルキスは腰元の鞘へと剣を収め、姿勢を正した。
「もう一度言わせてもらおう。ジャンベル騎士団にはあなたのような人が必要だ。その力を貸して欲しい」
セドマも同じように手にしていた鞘に剣を収めると、心が揺れ動いているようなそんな顔でオルキスをじっと見つめ返した。
がたりと音を立て、リリアはその場にぺたりと座り込む。
崩れ落ちたリリアへと視線を落とし、今度はオルキスが息をのむ。
「リリア! 悪い。すまなかった。泣かないでくれ」
肩を震わせてぽろぽろと涙をこぼし始めたリリアの目の前で、オルキスはどう接するべきかが分からず途方に暮れるように前髪を無造作にかき上げた。
「……こ、怖かった……」