次期国王はウブな花嫁を底なしに愛したい

涙を流しながら発せられたリリアの気持ちに、オルキスはただただ焦りを募らせていく。


「もちろんリリアを傷つけるつもりはまったくなくて……怖い思いをさせて悪かった……立てるか?」


恐る恐るといった様子で差し出されたオルキスの手へと、リリアは己の手を重ね置いた。

そしてオルキスの力を借りて何とか立ち上がったのち、リリアは今にでも涙がこぼれ落ちそうな瞳で力いっぱい睨みつける。


「オルキスのバカ! 本当に、怖かったんだからね!」


リリアが怖かったのは、刃先が自分へと向けられたことだけではなかった。

その前にオルキスが見せた冷淡な眼差しや声もひどく恐ろしく、彼の全てに恐怖を感じずにはいられなかったのだ。

とは言え、今目の前にいる困り顔のオルキスからは冷たさなど少しも感じられない。振り回されたことへの苛立ちをぶつけるように、リリアはオルキスの胸元を叩き続けた。


「こらっ! リリア、なんてことをっ! やめんかい!」


顔を青くさせたアレグロに注意されたことで、リリアははっとし手を止める。

もちろん本気の力で叩いていた訳ではなかったため、そんなに怒らなくても良いのにと反発したくもなったが、オルキスが申し訳なさそうな顔で自分を見つめていることに気づいた途端、これ以上彼を責めてはいけない気持ちに自然と変化していく。


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