次期国王はウブな花嫁を底なしに愛したい


「村を出た後は、できるだけ髪を隠しておけ」

「えっ? ……あぁ、そっか。うん、分かった」


なぜと口から疑問が出かかったが、すぐにリリアはああそうかと思い直す。

自分の髪や瞳の色が予言された運命の乙女のそれに当てはまっている以上、できるだけ隠しておいた方が身のためなのかもしれないと納得し、リリアはオルキスの言葉に大きく頷いた。

律儀にもフードをしっかりと手で押さえたリリアを見て、オルキスはたまらず笑みをこぼす。

微笑みの華やかさに心を掴まれ頬を赤くしたリリアの横を、セドマがムスッとした顔で通り過ぎようとする。

心の中はモルセンヌに着いた後のことを話したいという気持ちでいっぱいだったが、セドマから「行くぞ、リリア」と不機嫌な声をかけられたことで、リリアは開きかけていた口をぎゅっと閉じた。

テガナ村からモルセンヌまで五日ほどかかる。

途中どこかの町に寄り宿をとったり、馬を休めるために休憩だってするだろう。

その間ずっと行動を共にするのだから、オルキスと話をするチャンスはいくらでもあるはずだ。

自分の気持ちをなだめながら、リリアは持っていた手綱をオルキスへと手渡した。


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