次期国王はウブな花嫁を底なしに愛したい


「……それじゃあ。またあとで」

「リリア」


そのままセドマの元に向かおうとしたリリアだったが、オルキスの囁くような呼びかけ声に、すぐに足が止まってしまった。

振り返り感じた温かさに、リリアは息をのむ。

頬をくすぐる様に触れてきたオルキスの指先はもどかしく、なにより笑みの優しさに身体が熱くなり胸が高鳴っていく。


「居眠りして落馬するようなことがあっても、俺がちゃんと拾ってやるから安心しろ」


意地悪く聞こえる声音から、からかわれているのだと理解し反論したくもなるが、結局は気恥ずかしさの方が勝り、何も言えなくなってしまう。

オルキスの指先がリリアの頬から耳元、そして髪に触れた時、「失礼」とふたりの間にセドマが割って入ってきた。


「お心遣い感謝します。しかし娘を落とすようなへまはしませんので」


オルキスはセドマを見つめ何度か瞬きをしたあと、わずかに口角を上げる。


「道中長い。馬も、大人ふたりを乗せて走り続けるのは、くたびれることだろう。途中で俺がリリアは引き受けよう」

「いえ、私たち親子は休み休み進みます。オルキス様の貴重な時間を奪うことにもなりかねませんので、煩わしく思われた時は、どうぞ私どものことは気にせず先に行ってください。モルセンヌに到着したのち、あなた様の元へ馳せ参じますゆえ」



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