次期国王はウブな花嫁を底なしに愛したい

仏頂面で淡々と続けるセドマを、リリアは何度も「お父さん!」と呼びかけやめさせようとしたが、それらはことごとく無視される。


「では、そろそろ出発しましょう……行くぞ、リリア」


振り返ったセドマはリリアの腕をがしりと掴み、そのまま自分の馬に向かって歩き出す。

まるで自分たちを引き離すかのような行動と言葉に不満を覚えながら、リリアはセドマの背中をにらみつけた。

オルキスもまた面白くないといった顔で遠ざかっていくふたりを見つめていると、馬に乗ったアレフがゆっくり近づいてきて「オルキス様」と苦笑いを浮かべる。


「例え相手が誰であろうと、自分の娘が男と良い雰囲気になっているのを目にしたら最後、邪魔せずにはいられないということかもしれませんね」


オルキスは軽い身のこなしで白馬に跨ると、馬に乗ろうとするリリアに手を貸しているセドマをちらりと見た。


「さぁ俺たちも、のんびり帰るぞ」


のんびりを強調させながら意地悪く笑い、オルキスは白馬の横腹を軽く蹴る。


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